小豆島の思い出

大学の友達と岡山-小豆島への一泊旅行をしてから、もう6年になる。時が過ぎるのが早すぎる。なぜ小豆島へ行くことになったのか、はっきりとは覚えていないけれど、大学生活も終わりが近くなった初夏に、景色がいいところへ足を伸ばしたくなったのだろう。ちなみに、私は留年&休学&院進という複雑なコンボで大学生活を長引かせていたので、友達はもうすでに社会人になって数年が経っていた。私が思いついた学生気分の旅行に、快く付き合ってくれてありがたかった。

旅行一日目は、まず岡山駅に降り立ち、後楽園へ。この時初めて足を踏み入れたけれど、その広さにまず驚いた。金沢の兼六園を思い出す。広々として、手入れがきれいにされた庭園をてくてくとひたすら歩く。ちょうど5月だったので、青々とした緑が一面に広がっていて、目に眩しかった。園の端の方まで歩いて、お茶屋さんで私は抹茶とお茶菓子、友達は確かほうじ茶オレを頼んで、しばしの休憩をしてから、後楽園を後にした。

後楽園の後は、小豆島を目指すべく、岡山港へ。この時、船の待ち時間の間に駅弁を食べているのだけど、これがどこで買ったのかを思い出せない。フェリー乗り場の売店だったか、道中で買ったのか。確か、フェリー乗り場だったかもしれない。とにかく、駅弁を食べつつ船を待つなんて、最高に旅っぽさが出ていて、嬉しくなったのを思い出す。

しばらくして小豆島行きの船が来て、ドキドキしながら乗船。外のデッキに出ると、瀬戸内海が一望できた。この時、まだ空一面が曇っていて、灰色の景色の中、遠ざかっていく大きな橋と海、水しぶきを眺めながら、岡山港を後にした。小豆島まで約1時間くらいだったと思う。ずっとデッキに出て、海風を浴びつつ写真を撮ったりしていた。小豆島が近づいてくると、雲はありつつも空は晴れてきて、彩度の高い島の風景が目に飛び込んでくる。これから小豆島に降り立つんだと思うと、すごくワクワクする瞬間だった。


小豆島に着いたら、まずホテルに向かうべく、ホテルの人がバスで拾ってくれる地点まで市バスで移動。市バスでは、島の穏やかな風景が目について、安心して少し眠たくなるような気分だった。無事にその日に泊まるホテル(国民宿舎で、一泊5千円くらいのところだった)に着いて、しばらくお茶をした後、ホテル周辺を散策してみようということになった。(今思えば、若さゆえに体力があると感じる。今だったらそのままホテルで寝ているだろう。)

ホテル周辺は、何だかおもしろいことになっていた。ホテルの周りのオリーブ畑が坂道になっていて、ずっと下りていくと、その先には小さな公園や、季節的にまだ開いていない市民プールなどがひっそりと佇んでいた。またその先をずっと行くと、道の駅に繋がっていることも分かった。私達は誰もいない公園で、童心に帰ったような気分で、すべり台をひたすら滑ったり、ポーズを決めて写真を撮ったりしてはしゃぎ回った。しかし、ふと市民プールの方に足を向かわせると、賑わいを失ってくすんで見えるプールに、大きくて奇抜なカエルのモニュメントがどーんと鎮座していて、そのシュールな光景は何だか今でも夢に見そうなほどだった。

公園を後にして、港の方向に歩いていくと、大きなトンネルがあった。思わずくぐってみたくなるような雰囲気のあるトンネルだった。幸い車通りも少なく、歩道もあったので、そのトンネルを通って港の方まで歩いてみることになった。もっとも、その時はもっと行き当たりばったりに歩いているような感じだったと思う。

トンネルを出て、坂を下るように歩いていくと、すぐに左手に海が見え始めた。道路のすぐそばから砂浜になっていて、さっと降りていけるような距離感だ。堤防沿いには小舟がたくさん停泊していた。そんな風景を見ながら、港の方へ。港には、キリンを模した大きなオブジェがそびえ立った、何ともメルヘンな船が停泊していた。子ども達を乗せて、ネバーランドに陽気に旅立ってしまいそうだ。


港は暮れかかった空の色と相まって、とても素敵な場所だった。カエルと人魚を組み合わせたような像の前で写真を撮ったり、堤防の方まで歩いて海を眺めたりしていた。しかし、そろそろ晩ご飯の時間だね、とご飯屋さんを探し始めた時、私達はある不都合な事実を知ることになる。......この時間に開いているご飯屋さんが、ない!!(午後6時くらいだった)そもそも、ご飯屋さん自体がどこにもないーーー......!!


2へ続く