無題

11月

その人の訃報のニュースが出回った日を

よく覚えている

ちっぽけなSNSの画面に連なる怒涛の

衝撃 困惑 疑心

かなしみ

 

続きを書くはずだった

空白の項

 

思考が宙に浮く時間

その人のことをよく思う

 

赤い薔薇のように美しく

(底なしの醜さを眼前にして)

 

血が滲むように痛々しく

(吹けば飛ぶような軽薄の蔓延)

 

一杯のココアのように温かく

(喉を凍らす冷たい空気)

 

たんぽぽの綿毛のようにふわりと舞って

(鎖で繋がれたか細い手足)

 

どこにでも行けるよと

 

9月

少しだけ伸びをして

地面を踏んで

風に揺れる葉のように

よろけながら

たまに涙を流しながら

私はまた歩き始める